現代によみがえる古武術の存在意義
甲野善紀(こうの よしのり)さんをご存じでしょうか?「武術家」と紹介できると簡単なのですが、武術を基礎にした身体技法の研究家というような感じらしいです。自分の研究成果を本などで紹介したりもしています。
スポーツ界と介護業界では微妙に知られた存在のようで、特に陸上の為末(ためすえ)選手が似た考え方(ナンバ)を導入して成績を上げたことから話題になっている部分もあるようです(甲野さんは為末選手には直接関わっていないようです)。
甲野さんの説明は、分かりやすいような分かりにくいようなものです。後ろで上げたDVDなどの映像で動きを見ても、「なんかスゴい!」とは思うけど何が起きているのか分かりにくいものが多い。つまりその動きを学びたいと思っても学びにくいのです。さすがに武術だけあって、基本的には徒弟制度のような口伝のものである感じがします。DVDを見ていても、「こうしてこうして、そう、そんな感じ」といった具合の説明で、え、どんな感じ?と思う場合も多いです。
こう言い切るのは誤解されそうで勇気が必要なのですが、このような甲野さんの分かりにくさは、甲野さんの技術が「科学的」で無いことから来ているのではないかと思っています。このようなことはまた別の記事ででも取り上げたいくらいテーマなのですが、「科学的」というためにはある程度満たさなければならない要件があり、甲野さんの技術はそれを満たしていないのではないかと思います。
結論を急いでしまいますと、科学的であるためには第三者がその実験結果を再現できる必要があるのです(追試)。もしくは既知の理論を組み合わせることで、その新しい現象を説明できなくてはなりません(証明)。
甲野さんの技術は、動きの中の身体的な感覚など、直感的な知覚である「気づき」を積み重ねたもののようです。従って、「こうすればこうなるよ」という結論を説明することは出来ても、どうやってそのように考えたか、どうやってその結果にたどり着いたかを説明するのが非常に困難なのです。
もし追体験を試みたとしても、甲野さんと同レベルの精密な身体感覚を持たない我々がそれを感じることが出来ない可能性があります。つまり、甲野さんの技術を根本から理解しようとすると、それ相応の訓練が必要なのです。ここに科学的になりにくい壁があります。訓練されていない一般人には、追試も証明もできないのです。
もちろん私は甲野さんの技術が科学的でないからダメだと言うつもりは全くありません。むしろ科学的でないもの、つまり非科学的なものの中にも真実が含まれているという好例だとさえ思っています。
ただ甲野さんがどう凄いのかをここまででほとんど説明できていませんので、何がどう好例なのか?ということになりますね。でもすいません。私には説明できそうもありません。でも、最初の方で甲野さんの技術を見ても分かりにくいと書きましたが、中には分かりやすく、すぐに効果が実感できるものもあるのです。
その甲野さんが最近NHKの「まる得マガジン」にて、暮らしの中に生かせる技術としていろいろ紹介されていますので、それを見て頂きたいなあと。放送時間や曜日などは下記のリンクを参照願いたいのですが、7月10日から8月3日までで内容が一周した後、その後同じ内容をもう一週放送するようですので、いまからでも全部見ることは出来ます!ぜひごらんあれ。
そしてその中でも動作が分かりやすく効果も実感しやすい例として「腰に負担をかけず、いすから立ち上がる」と「腰に負担をかけず、階段や坂道を上る」の回をお勧めしたいです。逆に分かりにくい代表例としては「荷物を持ち上げてのせる」ではないかと思います。こちらの方はほとんど説明できていないに等しいのではないかとさえ思ってしまいます(汗) 勘のいい人は出来る、そうでない人は出来ないとなってしまうのではないかなあ。。
さて、この記事は結構こだわって書いたつもりなのですが、どこまで言いたいことが伝わったものか。。。甲野さんは現代に於いて本当に面白い視点を提供してくれるし、また人類の健康やいきいきとした暮らしのために貢献してくれるのではないかなあと期待している次第です(これらは甲野さんの目指すものとは異なりますが、かってにそうなっちゃうんじゃないかなと)。
なお公式サイトにあったのですが、どうも甲野さんはTV出演は苦手だったようで「今後はこの種の依頼は、やはり断ろうとあらためて思った」とありますので、興味のある方は今回のまる得マガジンをどうぞお見逃しなく。
NHKまる得マガジン 甲野善紀の暮らしのなかの古武術活用法 放送日
甲野善紀の暮らしのなかの古武術活用法―2006年7月~9月
松聲館 ;本人の公式サイト
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